北大路欣也と菅原文太の傑作『仁義なき戦い　広島死闘篇』をHuluで見る

Huluで久しぶりに『仁義なき戦い　広島死闘篇』を観ました。1973年の東映の映画で、脚本・笠原和夫、監督は深作欣二。

この映画は『仁義なき戦い』シリーズの第二作で、主演は菅原文太ということになっていますが話の焦点になっており事実上の主役と言えるのは、実は北大路欣也です。と、いうか、この映画、菅原文太扮する広能は出て来なくても話は成立します。何故そんなことになったかというと、このシリーズ第2作が製作決定した当時は原作の連載がまだ充分に進んでいなかったからとのこと。

確かに実際にあった事件に材をとっているとはいえ、原作とされているものを追い越して先に佳境部を描くわけに行きませんものね。だから番外編的な一本になった。

でもそれが良かったんです。『仁義なき戦い』シリーズはどれもハードコアなバイオレンス描写が鮮烈ですが、群像劇であるのでややパノラマ的になるきらいがある。でも本作は暴力描写は過激でありつつも焦点はいつも主人公である山中に合っていて、だから心情、情感が掘り下げて描かれている。ただ血なまぐさいだけではないロマンチックなものがそこにある。それが良いんですね。

むろん純真な若者を思いのままに操り、自分は血を流さずいい思いをするのはいつも組織のトップにいる者たち、というシリーズを貫く主張も分かりやすく鮮烈に叩きつけられています。何度観ても胸に迫る一本です。